啐啄同時

若手研究者を応援するオヤジ研究者の独白的な日記です。

(月)「プレボテラ」(Prevotella)という腸内細菌とSARS-Cov2に関する情報に科学的根拠なし!

2020年2月3日にResearchGateにPreprint (出版前論文)として、

「The 2019 Wuhan outbreak is caused by the bacteria Prevotella, which is aided by the coronavirus, possibly to adhere to epithelial cells - Prevotella is present in huge amounts in patients from both China and Hong Kong」by Sandeep Chakraborty

が作られて、

最新では同年5月1日に編集されて、OSFPREPRINTSという出版前の論文デポジトリーに投稿された論文

SARS-Cov2 enables anaerobic bacteria (Prevotella, et al) to colonize the lungs disrupting homeostasis - symptoms (ARDS, septic shock, blood clots, arterial stroke) finds resonance, with key differences, in the 'forgotten disease' lemierre Syndrome, caused by anaerobic bacteria enabled by Epstein Barr Virus」by Sandeep Chakraborty

という論文が、世界的に大きな物議を起こしています。

 はっきり言って、この論文には科学的な根拠がないということが、明確になってきています。特にフランスにて、これは「Fake news」として注意するようにとの喚起が数多く出回っています。

 「なんでまた、ウイルス感染にバクテリアが直接に関係するの?」と、普通の生物学者ならすぐに疑問に思うでしょう。

 せっかく、出版前にでも有用情報はみんなで共有しましょうという機運の中、意図なく間違った報告や解釈はある得ますが、本件についてそれ以上の何かを感じるのは、とても残念なことです。

 しっかり、事実や主張の合理性や検証のあり方などをしっかり見極めて行くことが、とても大切に思われます。

 

(日) サウジアラビアのCOVID-19感染者数の91%が外国人

 サウジアラビア保健省の発表によりますと、サウジアラビア国内の感染者数は、昨日の2020年5月2日現在で25,459名(内3,765名が回復、176名が死亡)となっています。

 日本は、同日現在で、感染者数が11,702名(内4,211名が回復、458名が死亡)となっています。日本の場合の国籍は分かりません。

 サウジアラビアの感染者数は、当初日本より遥かに少なかったのですが、外国人労働者のコミュニティの検査を行なってから急激に増加傾向に転じました。特に、感染者の91%が外国人という事実は、この感染対策に社会的な要素が加わり、今後の方向性が注目されます。

 

(土) 大学キャンパスの剪定活動の再開

 教授が主務とするサウジアラビアの大学KAUSTでは、今朝より本格的な大学内植木や芝生の剪定活動が再開されました。

 常時ゴーストタウンのようになっていた大学キャンパスには、まだ休日の午前7時台というのに、何本も並木のように立ち並ぶヤツメナシの樹木に登っての剪定作業がもう終わろうしていましたが、多くの労働者の人々が地上も含めて働いていました。

 毎朝のウォーキングの途中に久しぶりのに多くの人が働くのをみたように思います。

  サウジアラビアの感染者数は1万人を突破してきていますが、その85%は外国人労働者という実態が浮き彫りになってきています。低賃金で働く外国人労働者の人々の衛生環境も劣悪ではないものの、サウジ人の人々よりはあまり良くないので、今後の対処の仕方が難しくなっています。そんなことを考えながら、この国の持つ社会構造と日本を比べながら、将来的な社会の在り方もコロナ後に議論されてくるのかもしれませんね。

 

(金) 気づいたら、もう5月!

この1月の末頃に、新型コロナ(COVID-19)の中国の状況を注視しながら、全世界に広がるパンデミックになるのかならないのかヤキモキしながら、いよいよ何らかの対策がいるかも知れないとの議論が始まり出しました。サウジアラビアもまだ冬で、夜は肌寒い日々が続いていました。

 そして気がついたら、もう5月!サウジアラビアの夏がそろそろスタートしそうな季節となってしまいました。

 

(木) 本庶佑先生の偽情報に京大ホームから声明

 数日前に、教授が主務とするサウジアラビアの大学KAUSTのスイス人の学部長から急遽メールが入りました。「Dr. Honjoが新型コロナウイルスは自然にできたものではなく、人工的に作られたものだ。・・」という趣旨の英文のニュース記事が一緒に載っていました。

 本庶先生とは、当時の総合科学技術会議で約6年間に亘って一緒に仕事をさせていただいてよく知っているので、「そんなはずはないし、日本のニュースでもそんな話は聞いたことがない。」とすぐに返事した次第でした。

 そして、今日、いろいろな日本のメディアが、このニュース偽情報のことを報じるとともに、京都大学のホームページを通じて本庶先生が英文の声明を出したということを知りました。

 偽ニュースは非常によく出来ていて、まさにそういうことも言うのかなと思うぐらいの巧妙さでした。これは、「えっ!」とは思うものの、「そうなのかな。」と納得しそうな妙に説得力のあるような書き方なのです。その分、非常にタチが悪いのです。

 したがって、いち早く英文にて京都大学のホームページを通じて本庶先生ご自身による声明が出されたことは、非常に良かったと思います。

 現在、情報発信の方法が多様化して来ているとともに、誰でもが検証されることもなく直ちに情報を発信することができるようになりました。いわば「国民総ジャーナリスト」のような状況ができて来ています。したがって、このブログでもそうですが、表現の自由の根底には情報発信者としての責任がいつも発生していることを心しておかねばならないと思います。


Dr. Tasuku Honjo’s statements from Kyoto University.


https://www.kyoto-u.ac.jp/en/about/events_news/department/koto-kenkyu-in/news/2020/200427_1.html



(水) COVID-19/SARS-CoV2のRNA依存型RNAポリメラーゼはプルーフ・リーディング機能を持つらしい

新型コロナウイルスは、つまり現在のCOCID-19のパンデミックの原因ウイルスであるSARS-CoV2の突然変異率、つまり分子進化的に言えば進化速度は、感染が及ぼすクラスター化のウイルスゲノム情報からみた推定であったり、今後の方向性の予測であったり、あるいはワクチン開発における効果の程度や範囲を規定する上で、極めて重要です。

  インフルエンザA型ウイルスの突然変異は、その複製酵素であるRNA依存型RNAポリメラーゼがRNAを複製する時に、複製エラーを起こすことによって起こります。複製エラーを修復する機構を持っていたような痕跡はあるものの、修復機能は十分に果たされませんので、その次世代のRNAにそのエラーがそのまま反映されます。このため、その突然変異率はヒトゲノムのそれに比べて約100万倍も高いのです。

  エイズウイルスのHIVなどのレトロウイルスは、事情がもっと複雑です。というのも、ウイルスRNAとして増殖するときはインフルエンザA型ウイルスと同様にヒトゲノムに比べて約100万倍も高い突然変異率を持ちますが、逆転写酵素でDNAに変換され宿主のヒトゲノムなどのDNAに入り込むとヒトゲノムの突然変異率と同じになります。ヒトゲノムDNAを複製する酵素のDNAポリメラーゼは、非常に精密に制御されエラーの修復機構を有するので、突然変異率がウイルスなどに比べると極端に低いことになります。

 したがって、今回の新型コロナウイルスの複製酵素がエラーの修復機構を持つかどうかは非常に重要な問題となります。その突然変異率の高低は、開発されるワクチンの有効性の程度に直結するからです。

 

(火) 「新型コロナ検査をできるだけしない」方針の破綻

 韓国における「徹底して多くの新型コロナの検査を行なって陽性者と陰性者の区別をおこなう」方針で感染症対策を行う方式と、日本における「できるだけ検査を行わずに、症状が明確に出た者だけに検査を行なう」方針の方式は、その方針の違いが正反対であることから国際的な注目を浴びて来ました。

 しかしながら、その結果は早くに分かってしまいました。つまり、韓国が感染対策の成功例として国際的に大いに認識されているのに対して、日本の方はむしろ国際的には今後のさらなる感染拡大が心配されてきている状況が出ているのです。この1週間ほどは、非常事態宣言が遅まきながらも発令され、各地方自治体の努力もあって、新規感染者数の増加スピードがそれ以前の週より鈍ってきているものの、すでに韓国における感染者数を日本は超えてしまいました。

 もちろん感染対策の成否は、感染者数よりも死者数で比較すべきだという意見もその通りと思いますが、重症者対策に医療資源を割くために「検査をできるだけ行わない」方針の論理が、実際の医療現場では破綻していることを認識しなければなりません。

 「検査をできるだけ多く行なう」方式は、確かに検査体制やそのコストはかかりますが、いち早く陽性の人を特定して、その人の症状やハイリスクグループに入るかどうかなどによって病院に行くべきか自宅やホテルで自己隔離すべきかを判断して、医療資源の適切な配分を即時的に可能とし、結果的に重症者への医療資源の重点的な配分ができるとともに、医療破綻からの回避を効率的に可能としたのでした。

 一方、「検査をできるだけ行わない」方針は、陽性か陰性かわからないまま病院を訪れる患者の人達に対して対応する医療従事者は、全員が「陽性」と想定して対応しなければならないため、またそのひとり一人に対する対応の手間と時間が「検査」以上に要するため、医療従事者の負荷が増大しているのです。つまり、「検査をあまり行わない」ことにより陰性の人達にも陽性の人達と同じ対応をする分、医療資源をもったいない程に無駄使いしているのです。これでは、現場の命懸けで対応にあたる医療従事者の方々の負荷と疲労は蓄積するばかりで、むしろ医療破綻を加速させているとさえ言えるのかも知れません。

 つまり、「検査をあまり行わない」方針は、すでに破綻していることを認識する必要があります。重症者に医療資源を重点的に振り向けようとするならば、「検査をできるだけ行なう」方針に転換する必要があるのです。

  ただ、ここで注意が必要なのは、もし一般の人達が社会(的)距離をしっかり守って感染者数の増加をこれ以上にならないように抑えられるとすれば、確かに圧倒的多数は陰性の人達なので、いわゆる「コミュニティ・テスト(community test)」と言った地域住民の全員の検査というのは、陰性の人達ばかり検査することになり、検査資源の無駄使いということになります。

 日本の場合には検査は医療従事者が行なうことが強く推奨されていますが、最近に歯科医師も検査ができるようになりました。一方、米国のニューヨーク州ではドラッグストア(薬局)でさえ行なうことができるようにすると州知事が最近に宣言しました。

 また、議論はあるものの楽天が自分で検査できるキットを発売して来たり、島津製作所がウォークイン型の迅速な検査キットの開発に成功するなど、検査の技術革新が次々と起こって来ています。PCR検査だけでなく、検査結果が直ぐに出るタンパク質をターゲットとした抗原検査や抗体検査も可能となってくるでしょう。

 もっと大事なことは、感染者の唾液に大量なウイルス粒子が含まれていることが、だんだん分かって来ました。唾液を飛ばすエアゾルで感染する確率が高いことを考えれば、それは当然といえば当然なのですが。もし唾液でPCR検査が可能となれば、今の鼻腔に長い綿棒を突っ込んでやる方式よりずっと簡便となります。

 鼻腔による検査をその二次感染の可能性から敬遠するお医者さんも、唾液検査なら患者さん自身にやってもらってその試料を直ぐに貰えばいいだけなので、十分に対応可能となると思います。

 おそらく、韓国方式の成功は、国を挙げて多くのベンチャー企業などが検査キットの開発を同時に行いながら新方式を次々に即応的に投入することによって、検査資源の投入コストを格段に下げるとともに、医療資源の節約に貢献させたことによるものと思われます。

 この検査資源と医療資源の明確な区別化と、その感染者数の増減に伴う両資源の動的な洞察が欠如していたことが、日本における検査方針の破綻を招いていることの主な原因であることに十分注意払う必要があると思います。

 もちろん、社会(的)距離の遵守による実経済の停滞という経済コストも考慮しなければなりません。そして、教育に対する考慮も必要なのです。

 したがって、このようなパンデミックに対する対策は、感染症の専門家だけでなく、様々な専門家の意見を総合して集約させて、政治家や行政の方々が個々の政策としてタイミングよく打ち出せるシステムが必要であることが分かります。なんとか、現在の検査方針を早急に見直して、そういうシステムが早く構築されてて、より有効な総合的な感染対策がなされることを願うばかりです。

 

 

(月) 「Zoom疲れ」

 本日の2020年4月27日(月)に、サウジアラビアの大学KAUSTでの自宅勤務中に行ったZoom会議が4回でした。明日に予定されいるZoom会議が6回となっています。

 もちろん1回のZoom会議の長さにもよりますが、普通は1時間が基本かなと思います。ときどき、30分ほどで終わったり、逆に1時間半を越えるような長いものもあります。

 しかし、大体1日2回が限度で、それ以上の回数のZoom会議を行うと、自分の仕事ができなくなります。そして、今日や明日のように1日で4回を超えると、もう1日中Zoom会議をしていたような感覚で、疲れがどっと出てきてしまいます。

 在宅勤務は、執筆など自分が落ち着いて日頃できなかったことが、できるようになる天がくれた時間だと勝手に解釈していたら、オフィスにいる時よりも忙しくなっている気がします。

 ちょうど、仕事のコミュニケーションが郵便やファックスからメールなどに代わって、その効率性から仕事が楽になると考えていたら逆に忙しくなったという現象に似ているように思います。

 むしろ即時的に返事をすることが期待されているので、その分大変になったことが大きいと思いますが、容易にメールを書くことができる体制ができているので、すぐにメールを書いていてその分自分で仕事を増やして可能性も高いと思われます。

 「メールも自粛!」というスローガンがもう一つあってもいいのかも知れません。

(金)「上を向いて歩こうプロジェクト」(コロナ対策応援)

 宮本亜門さん主導の「上を向いて歩こうプロジェクト」が、新型コロナ対策の「家に居よう」(Stay home and stay safe!)の応援として、ユーチューブに登場するや、もうすぐに大きな反響を呼んでいるようです。

 確かに長い間自宅に居なければならないというのは、時として苦痛なこともあり、時として対人恐怖症になりそうな不安もあったりします。

 しかし、なんか自分だけではないんだあ!、といった安心感というか連帯感とかいうなものが生まれそうな、そんなビデオクリップです。

 イタリアの街角でお互いの部屋の窓を開けて歌を歌ってお互いを応援し合うのに目的が似ていますが、このビデオクリップのアイデアはどんどん日本中に広がっていくような気がします。

【春】上を向いて歩こう〜SING FOR HOPE プロジェクト [LOOK UP TO THE SKY (Sukiyaki)]

https://youtu.be/lBNJIhfa9Zs

 

日本を元気に!みんなで歌って「上を向いて歩こう坂本冬美ver.

https://youtu.be/Sy1zdzgmEzU

 

 

 

(木) COVID-19関連研究論文のファースト・トラック化

 新型コロナウイルスによる感染症に全般を「COVID-19」と総称し、その原因ウイルスのことを「SARS-CoV2」と言います。

 この感染症の臨床的そして疫学的な研究論文とともに、ゲノム研究やビッグデータ研究など加速度的に広がりを見せ、、時とともに投稿される研究論文の数がどんどん多くなってきています。

 それにともなって、それを投稿前に論文原稿を公開するbioRχivのようなプレプリントリポジトリーの利用が大幅に増えてきています。

 また、投稿論文を受け付ける学術雑誌の方でも、査読手続きと特別に早めるファースト・トラックを開設しているところも多くなってきました。

 イギリスのウェルカム基金が、いち早くこのCOVID-19に関連する論文は投稿前でも共有し合いましょうという宣言的なことを出し、それに賛意する大学や研究機関に参加を呼びかけたところ、多くの有名な大学や研究機関がその宣言にサインして支持を表明しています。

研究論文の信頼性を担保する意味で査読は必須ではありますが、人類全体に大きな危機感を与えている今回のパンデミックは、研究サイドでも迅速な対応が求められており、その意味においても、情報の共有化をいち早く果たすことは重要であることは間違いありません。


 

(水) 在宅勤務の日常化

 日本でも、在宅勤務が始まったり、もう数週間に亘っているところも多いと思います。

大学関係や大きな会社の場合は経営的な心配があまりないのでしょうが、自営業や小さな会社の場合は、売り上げなどが経営に直結するので、また自宅ではできない仕事も多々あることから本当に大変なことだと思います。

 こちらサウジアラビアの大学KAUSTでは、在宅勤務が始まってそろそろ2ヶ月になろうとしています。

 

 

(火) 在宅勤務の忙しさ

 自宅待機あるいは自宅隔離という感染対策で、かなり多くの人達が在宅勤務のような形で働いているのではないかと推察します。そして、オフィスなどではできなかったことが家ならできるという、ある種の期待感にも溢れていたのではないかと思います。

 ところが、現実に在宅勤務として仕事をし出すと、時間の経つのが早いこと、早いこと。これに、Zoomなどによるテレ会議が2つも入ったら、もうそれで1日が終わってしまうような感じになってしまいます。これで、本当に生産性が上がっているのかという自問自答に陥ったりしますが、ここはじっくり腹を決めて落ち着いて仕事をしましょう。

 やはり生産性の向上というのは、徹底して無駄を省いて目的を達することなので、それに向かっていけば必ずや目的達成に近づけると思います。そう思って、頑張ろう!

 

(月) ニューヨーク原油先物(5月限)が暴落の果てにマイナス取引

本日2020年4月20日(月)において、ニューヨーク原油先物取引(5月限)の取り引き価格が暴落し、前代未聞の「マイナス取引」に陥りました。フィスコによりますと、1バレルの価格が、サウジ時間の同日、

16:10  11ドル台に急落、

18:41  10ドル台に突入

19:56   5ドル台に突入 (72%下落)

20:07  4ドル台に突入 (74%下落)

20:41  1ドルに下落 (一時)

22:10 マイナスで取引

 

という大変な状況が発生しています。

原油価格の損益分岐点が、1バレルあたりの価格で

55ドルから60ドルと言われているので、

この大赤字は今後どのように累積していくのかを

見守っていく必要があることは確かだと思います。