啐啄同時

若手研究者を応援するオヤジ研究者の独白的な日記です。

(水) COVID-19/SARS-CoV2のRNA依存型RNAポリメラーゼはプルーフ・リーディング機能を持つらしい

新型コロナウイルスは、つまり現在のCOCID-19のパンデミックの原因ウイルスであるSARS-CoV2の突然変異率、つまり分子進化的に言えば進化速度は、感染が及ぼすクラスター化のウイルスゲノム情報からみた推定であったり、今後の方向性の予測であったり、あるいはワクチン開発における効果の程度や範囲を規定する上で、極めて重要です。

  インフルエンザA型ウイルスの突然変異は、その複製酵素であるRNA依存型RNAポリメラーゼがRNAを複製する時に、複製エラーを起こすことによって起こります。複製エラーを修復する機構を持っていたような痕跡はあるものの、修復機能は十分に果たされませんので、その次世代のRNAにそのエラーがそのまま反映されます。このため、その突然変異率はヒトゲノムのそれに比べて約100万倍も高いのです。

  エイズウイルスのHIVなどのレトロウイルスは、事情がもっと複雑です。というのも、ウイルスRNAとして増殖するときはインフルエンザA型ウイルスと同様にヒトゲノムに比べて約100万倍も高い突然変異率を持ちますが、逆転写酵素でDNAに変換され宿主のヒトゲノムなどのDNAに入り込むとヒトゲノムの突然変異率と同じになります。ヒトゲノムDNAを複製する酵素のDNAポリメラーゼは、非常に精密に制御されエラーの修復機構を有するので、突然変異率がウイルスなどに比べると極端に低いことになります。

 したがって、今回の新型コロナウイルスの複製酵素がエラーの修復機構を持つかどうかは非常に重要な問題となります。その突然変異率の高低は、開発されるワクチンの有効性の程度に直結するからです。