啐啄同時

若手研究者を応援するオヤジ研究者の独白的な日記です。

収入格差と生活費格差

 研究者の収入の国による格差の問題は、微妙な問題ではありますが、どうしても避けては通れない問題です。
 比較的に事情のいい台湾を例に取ってみましょう。
 基本的に、研究者の給料は日本の同じランクの場合のおよそ半分と考えられます。特別な教授ポストは別として、ここで問題にする若手のポストドク研究者や助教クラスでは、およそ半分と考えられます。
 一方、生活費もおよそ半分といわれています。たとえば、コンビニでのお弁当は約200円以下で買えますし、もちろん地域にはよりますでしょうが、一般的に家賃もおよそ半分前後と思われます。
 したがって、一家そろって台湾で生活するには十分と思われます。問題は、既婚の若手研究者が端子運赴任する場合です。日本での高い生活費を台湾の給料で稼ぎ出すことは、かなり大変なことと思われます。また、生活設計として、貯蓄や子供の教育費などの問題も現実には大きな問題となります。
 韓国でも、基本的には台湾と同じ状況と想われます。もちろん、企業の場合は全く別の話になりますので、ここでは大学などの研究者に関する大雑把な状況です。
 これが中国となると、特別な措置をしてもらわない限り、その収入格差は約3分の1以下になると言われています。もちろん、生活費も同じような割合で安くなりますので、絶対額の問題はあるとしても、台湾と同じような状況でしょう。
 マレーシアやインドとなると、その詳細な情報は持っていませんが、その収入格差はもっと広がるものと思います。一方、香港やシンガポールになると、話がまた少し異なり、教授クラスでは日本をはるかに超えると言われていますが、問題の若手研究者については、よく調べる必要があります。
 いずれにしても、アジア地域全体の科学の質を上げ、人材を共有化することが大きな目標ですが、そのためには日本の科学における先導性を確保しておかねばなりません。そのためには、若手研究者には日本には必ず帰って日本のサイエンスを支えることを前提としていますので、人材交流の柔軟性の確保のためにも、この収入格差の問題は、当面、大きな問題になっていると思います。
 「当面」といった意味は、日本における研究者の給料は今後下がり続ける可能性が高いと思われます。今回、平均10%の給与カットを受けたところが多かったと思いますが、今後もこの給与カットは、毎年とは言わないまでも、続いていくでしょう。日本の破たん的な財政赤字の蓄積から判断すると、公務員や準公務員の継続的な給与カットに向かわざるを得ないと想われます。したがって、むしろ日本のほうから、前述のアジア諸国との給与格差の幅は、減っていく可能性があります。