啐啄同時

若手研究者を応援するオヤジ研究者の独白的な日記です。

目からうろこの「実質金利」格差

 「日本、実は「高金利」 欧米は実質マイナス拡大 超円高の要因に」という見出しで、日本経済新聞9月2日(金)朝刊(9月1日(木)23:50 on-line)で、「実質金利」のマジックを見事に説明しています。
 これで、「超円高」の理由が分かりました。
 つまり、たとえば、日本で100円を銀行に1年預けても、ほとんど金利は0%なので、1年後も100円のまま。その100円で、1年預けた後に100円の物を買おうとすると、デフレで物価はほとんど上がっていないので、100円の物が一応買えることになります。
 一方、米国で100円相当を銀行に1年預けると、銀行金利は日本より高いので例えば3%とすると、1年後は確かに103円相当になっています。しかし、インフレで物価が上昇しているので、1年前には100円だった物が105円になってしまっています。
 したがって、銀行の3%の金利をもらって100円の物を買おうとしても、その物の値段は105円になっているので、103円-105円=-2円のマイナスとなり、2円の手出しが必要になります。 これは、銀行に100円1年間預けて金利が実質2%のマイナス金利となることと同等です。
 これでは、みんな、ドル(ユーロも基本的に同じ)を手放して、日本円を買いますね。これが「超円高」の原因。

 記事によると、
 「日米欧の主要国・地域で、政策金利から物価上昇率を差し引いた実質金利が、そろってマイナスとなった。物価上昇圧力が高まっているが、景気への配慮から利上げに踏み切れないためだ。金融が極めて緩和的な状況といえ、物価上昇を加速させやすい。デフレ傾向の日本やスイスの実質金利は相対的に高く、米国の実質金利との格差は広がっている。これが歴史的な通貨高の原因になっている。」

 つまり、
 「6月の米国の実質金利はマイナス3.3%で、1年前のマイナス0.8%から大きく低下した。ユーロ圏、英国もマイナス幅を広げた。日本とスイスの実質金利もゼロ近辺ながらマイナスだ。日米欧が実質マイナス金利となるのは2000年代半ば以来となる。
 先進国の実質金利がマイナスとなったのは、物価がじわじわと上昇する中で、景気刺激を優先して低金利政策を維持しているためだ。」

そして、
 「米国は少なくとも13年半ばまでは事実上のゼロ金利を続ける方針。欧州はインフレ圧力を抑えるため7月に利上げしたが、金融不安の高まりを受けて「再び利下げに転じる」との見方が出ている。ただ物価上昇に対する国民の不満も高まっており、金融政策は景気刺激と物価安定のジレンマに直面している。
 経済成長が続く新興国でも実質金利は低下傾向にある。中国はマイナス3.2%、韓国もマイナス1.2%だ。実質金利がプラスのブラジルも8月31日、政策金利を0.5%引き下げた。実質金利の低下が世界的に広がれば、物価上昇の勢いが強まる懸念がある。
 投資マネーは実質金利が相対的に高い日本に流れ込んでいる。名目金利は低いが、物価上昇による資産価値の下落の可能性が高くないと見ているためだ。」
さらに、
 「日本の実質金利から米国の実質金利を引いた金利差は1年前は1.6%だったが、今年6月には3.21%に広がった。スイスの実質金利も米国より高く、円とスイスフランは8月に対米ドルで過去最高値を記録した。日本はすでにゼロ金利で、名目金利の低下余地は残っていない。成長力を高めるなどでデフレから脱却しない限り、実質金利を下げて円高に歯止めをかけることは難しい。」

(引用:http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819591E2E3E2E3908DE2E3E2EBE0E2E3E39F9FEAE2E2E2