啐啄同時

若手研究者を応援するオヤジ研究者の独白的な日記です。

(水) mRNAワクチンの成功の秘訣: 塩基Uを類似体に変えていた!

ファイザー社と独ビオンテク社のmRNAワクチンは(モデルナ社のも創のようであるが)、どうしてワクチンとして効くかというと、専門的には2つの謎を解かねばなりません。

 一つは、RNAはDNAに比べるといっぱんに壊れやすく、mRNAも例外ではありません。このため、-80℃以下や-20℃以下での冷凍保存輸送が必要なことはうなづけます。しかし、いくら脂肪のナノパーティクル(ナノ粒子)でmRNAを包んでヒトの体内細胞に入れたところで、その粒子から出てきたらすぐに分解されたり壊れたりして、リボゾームまでたどり着いて安定的に組み込まれたウイルスと同じスパイク・タンパク質を発現させることは難しいと考えられます。

 もう一つは、ナノ粒子から出た外来のmRNAがヒト細胞に入るところや細胞の内で、mRNA自身が非自己として体内の認識の免疫システムに認識され、対象のウイルスと同じスパイク・タンパク質を発現させて免疫をつけさせる前に、このmRNAが免疫システムによって攻撃される可能性が高いと思われるからです。

 

 これら2つの難問を同時に解決させたのが、塩基Uを別の類似体に変えるという新技術で、その類似体が何かを発見したことでした。この画期的な発見は5年以上前になされており、これがわずか1年以内に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するmRNAワクチンを完成させるという画期的な成功に導いた秘訣の一つであったと言えるでしょう。

 また、このmRNAワクチンシステムは、対象とするウイルスのタンパク質の塩基配列の情報さえわかれば人工的に合成できるので、原則的には新型コロナだけでなくどんなウイルにも効くと考えられます。

 この画期的な塩基類似体の発見による新型コロナに対するmRNAワクチン開発は、故人的にはノーベル賞に値するのではないかと考えています。