このGLUD2遺伝子や、以下の引用に出てくるCbln1遺伝子のように、もう一度候補遺伝子に注目してから、ネットワーク解析や進化解析にいくべき時期が来たように思います。
つまり、ゲノム時代やオミックス時代の前には、注目する遺伝子は、1個やせいぜい数個でした。あおの1個やせいぜい数個の遺伝子を中心に、個別的な実験手法を駆使しながら、それらの関連するいわゆるカスケードやネットワークを調べていました。シグナル・トランスダクションのカスケードやパスウェイを研究は、その典型と言えます。
しかし、ある局面でそれらと繋がる遺伝子やタンパク質を発見できず、「流れ」の糸はプツンと切れてしまい、それ以上どうしようもないほど行き詰まってしまいます。
そこで、どうせなら頑張ってまずはゲノムに存在する遺伝子やそこにコードされているタンパク質を、「総さらい」で同定してやろうということになったわけです。これは、1985年に米国のDOE主導で提案された段階のヒトゲノムプロジェクトの最初の趣旨とは若干違いますが、ヒトゲノムプロジェクトが「単に若い研究者を巻き込んだ道路工事」だと批判された状況から、1990年代の後半にはむしろ支持されてくる「動機」や「新たな背景」になっていたというほうが、より正確かもしれません。
そして、そのゲノム研究やオミックス研究の花盛りの時期に、それを有効に活用した個別遺伝子の研究に戻る時期にきているように思います。だれが、その先陣を切って「とてつもない大発見」に向かうのか?
まさに、この分野の研究者にとって、「とてもおいしい」チャンスが、いまそこにあるのです。ただし、どのような候補遺伝子やどのような現象に注目して、この配列データの大海に踏み込むかが、大きな成否を決める鍵になっているように思います。