啐啄同時

若手研究者を応援するオヤジ研究者の独白的な日記です。

GWASから比較アノテーションへ〜Jay Shendure博士の講演〜


 Lynn Jorde教授の前に講演したJay Shendure博士(University of Washington)です。題目は、"NEXT-GENERATION HUMAN GENETICS"で、非常に面白かったです。
 ご存じのように、疾病感受性遺伝子の探索が多数のサンプルを必要とするGWAS(Genome-wide Association Studies)から、少数サンプルながら全ゲノム解析を行いAnnotationから候補遺伝子を絞り込んでいくアプローチに移行しつつあります。
 特に、特定疾患に注目したとき、患者さん1個人のサンプルの全ゲノム情報と、2人に増やしたときの全ゲノム情報を比較して、共通でないSNPや既存の健常個体のSNPを取り除いていきます。これを3人目の全ゲノム情報とさらに比較して行く作業を続けながら、アノテーション(注釈情報)を参照して、さらに候補遺伝子を絞り込みます。これを、4人目、5人目と、ほぼ10人くらいまで繰り返して行うと、候補遺伝子が1個から数個に絞り込まれてくるというわけです。
 全ゲノム解析が、時間的にも費用的にも飛躍的に楽になったので、この全ゲノム情報に基づいたアノテーションによる疾病感受性遺伝子の絞り込み法は、今後非常な勢いで増えていくものと予想されます。
 もちろん、この方法の問題点や限界もあります。たとえば、false positive(擬陽性)の候補遺伝子が上がってくる可能性や、アノテーションが非常に手薄なためコーディング領域の遺伝子ではないcis-elementsなどの制御領域が候補として上がってこない問題点等です。
 Lynnもこの問題を話しましたが、Jayも非常にわかりやすくまとめていたのが印象的でした。
 かれらは、Nature誌やNature Genetics誌への論文を連発しているのも、よく分かる気がしました。