啐啄同時

若手研究者を応援するオヤジ研究者の独白的な日記です。

「ファイナンシャル・コンテイジョン(financial contagion)

金融危機の際に起こる財政的な伝染や連鎖反応のこと。例えば、株式市場で株価の急落が生じた場合、個人であろうが機関投資家であろうが、損失した部分を取り戻そうとするため、まだ損失の程度の少ない株式や債券などを次々と売り抜けていこうとすることによって、価格の急落や損失が次々と異なる投資対象に伝染して広がっていくこと。
今回の中国の経済バブル崩壊は、国家がどう救済策の手を打とうが経済原理からして、第2章になるか最終章になるかは別として、必ず起きる、あるいはすでに起きていると、考えられています。
特に、最近の慶應義塾大学小幡績准教授の解説は、秀逸です。小幡准教授は、中国のバブル崩壊の影響は、ファイナンシャル・コンテイジョンがあまり起きないので、限定的だと予測しています。つまり、中国の不動産の金が中国株式に向かっただけなので、損失は中国人投資家に主に限定され、他の国へのその意味での波及は限定的であると述べています。
しかし、日本株の下落や日本経済への負の影響は、次の4つの理由で警戒すべきと説きます。
「第1に、ギリシャ経済崩壊とタイミングが重なった。これにより原油も再び大きく下げている。世界全体のリスクをとろうという心理が低下し、世界全体の株が下がる可能性がある。」

「第2に、日本株は急激に上がりすぎた、ということだ。今年の上昇は、中国株、欧州株が急騰を見せた。そこへ、日本が遅れて、再度上昇した。そして、中国、欧州は崩れた。となると、バブルが崩れるのは日本の番だ、ということになる。米国株は、今年は上がっていない。大きく上がった分、日本株は下落幅が大きくなる可能性が高いということだ。」

「第3には、ギリシャ、上海が長引けば、米国FED金利引き上げと重なる可能性が出てくることだ。しかも、このイベントおよび6月の雇用統計で9月利上げが遠のいた、などと願望による楽観ムードがまた出てきたのが危険だ。」

(「もしFEDが淡々と上げたときには、ショックが生じる可能性がある。ただ、FEDギリシャ問題は考慮することになるが、ギリシャが長引けば、あまり待ち続けることもできないので、年内利上げがなくなることはないと思われる。つまり年内のどこかでは上がるので、ショックの大きさはタイミング次第とはいえ、必ずその場面は来る。」)

「しかし、もっとも大きいのは第4の理由で、中国の実体経済自体が大きく停滞することだ。見かけ上は、年率で7%成長行くかどうかはともかく、要は5%以上成長しているのだから、成長していることには間違いなく、それほど深刻に受け止めない向きもある。だが、これは危険だ。」

(「成長ステージにある経済においては、スピードは重要で、成長スピードの減速は、経済を混乱に陥れる可能性がある。なぜなら、企業も経済システムも、政府の制度も、高い成長率を前提に回っているからで、減速しただけで、自転車が転倒するように、持続できなくなる可能性がある。
すでにその危険性が高まっている中で、株価が暴落となれば、個人消費は大ダメージを受け、中国実体経済は停滞し、日本への影響も大きくなるだろう。したがって、金融的な危機の伝染、バブル崩壊の連鎖自体は、心配することはないが、実体経済減速による、景気停滞のリスクに対して準備する必要がある。」)


やはり、当然の見方ながら、市場としての中国経済の停滞が、日本経済だけでなく世界経済に及ぼす影響が一番のリスク要因ということのようです。

(参考: 東洋経済オンライン2015年07月09日配信: 行動ファイナンス:小幡績氏: 「中国バブル崩壊」の本当のリスクとは何か
私が日本株の下落を警戒する「4つの理由」:著者 小幡 績(慶應義塾大学准教授 ))<引用: http://toyokeizai.net/articles/-/76138?page=3# >