ロイターの最新の記事に、非常に重要なものがあったと思います。為替フォーラム 2020年5月28日 10:47 発信の「コラム:MMT時代に突入か、中長期はドル安の公算=高島修氏」(高島修 シティグループ証券チーフFXストラテジスト) の記事です。
MMT (現代貨幣理論)で世界経済が動き出したという現実を、強く意識せねばなりません。
MMTというのは、教授の理解では、世の中の経済の動きに関する政策において、大きく日銀が主に行うような「金融政策」と政府が主導して行うような「財政政策」の2つがあるのですが、基本的に後者の「財政出動」を中心に経済政策を行おうとするものです。今まで、日本の場合、国民一人当たりの借金が800万円を超えたとか、これ以上国が借金をするとすぐに国家経済が破綻すると言われていたのですが、ふと我にかえると「あれえ、国は借金ばかりしているけど、国は破綻しないなあ!」と、特に日本の場合はそう思うことが多くなってきました。
そうすると、増税をしないと国はやっていけないとか、日銀は金利政策ではもうマイナス金利でこれ以上金利的には動けないところにまできているし、禁じ手と言われた国際の自分買いも積極的に行なったきています。しかしながら、目標とするインフレ率2%もほとんど到達できないままに、今日まできている状況が続いています。つまり、金融政策では、世の中の経済状況の改善には大きな限界があることが分かってきたのです。
そこで、増税もやめ、むしろ巨額な財政出動を行なって経済を活性化する方が余程役に立つし、経済効果も非常に大きいではないか、という発想に至ったことになります。しかし、この場合、「借金はどうするの?赤字国際は発行し続けていいの?」となる訳ですね。そこで、「いいんじゃない!どんどんお札を刷ってどんどん発行すればいいよ!」と返答するのですが、「だったら、次の世代にその借金を負わせることになるんじゃないの?」と反論したくなります。ここが肝心なのですが、「いや、次の世代は借金をさらに次の世代に負ってもらえばいいよね。」となり、それはさらに次の次の世代、そして次の次の次の世代に引き渡せばいいことだとなります。つまり、借金なんか考えずに、どんどん財政出動すればいいという論理的な帰結に至ります。
簡単に言えば、これが「現代通貨理論」の本質で、今までの経済理論では説明できないことを理論化したものと言えます。教授は、経済の専門家ではないので、不正確なところも多々あると思うので、心配な方は自分で是非調べてみてください。
何れにしても、日本のように、自国通貨での借金が多い場合には、国民が「借金をたった今返せ!」などという無理な要求をしない限り、このMMTが非常に有効に働くことになります。
日本において、今回のコロナ禍による第2次補正予算を第1次補正予算に加えると、全体の財政出動は200兆円を超えるという空前絶後のものになっており、結果として「MMT」の理論を地でいくような財政政策になっていることを意識しようと、論評しているのです。これが、日本だけでなく、アメリカでも欧州でも起きており、まさに「MMT」時代に突入したという認識を持つべきだということになります。
もっと言うと、「バブルのどこが悪いの?」と言う開き直った言い方にもなるので注意が必要ですが、「バブルの再燃」を怖がり過ぎて、国民の年収が上がるどころか減り続けて貧困化の一途を辿っている日本の現状を考えると、「MMT」時代が否応無しにきていることになります。
したがって、「どうして実体経済はボロボロなのに、ニューヨーク市場や東京市場のように、株式相場は上がり続けているのか?」と言う質問にも、財政出動で出てきたお金があまりに大きいので、設備投資などを行う状況の前に、市場は先読みしてだぶついた資金が株式投資に向かっているためと言う論理的な回答ができることになります。したがって、このような上昇相場がどこまで続くかわかりませんが、資金のだぶつきが大きく存在する限り、小刻みな「リスクオフ」と「リスクオン」の状況の波はあるとしても、株式市場は基本的には上昇志向をたどるものと思われます。