啐啄同時

若手研究者を応援するオヤジ研究者の独白的な日記です。

「がん月打ち上げ(National Cancer Moon Shot )」プロジェクトの意味するもの

米国のオバマ大統領が本年2016年1月の一般教書で発表した「がん月打ち上げ」とでも訳すべき「Cancer Moon Shot 」プロジェクトは、十分に注目に値するものであります。
まず、プロジェクト総額で、1 billion USD (約1100億円: 1 USD =110円換算)というNIHの「Precision Medicine」をはるかに超えるものです。
次に、NIHはもちろんですが、国防総省やエネルギー省なども含む広範囲な政府機関にわたる総合プロジェクトになっています。
特に、「10年かかるところは5年でやる」といった加速に重点が置かれています。
内容的には、免疫治療のような新しい方法への重点研究開発や、「情報」のアクセスの充実など、重要項目が謳われています。

1960年代、当時のケネディ大統領は、1960年代の終わりまでには米国は人類を月に送ると宣言し、ロシア(当時からソ連)との宇宙開発競争に勝負をかけ、いわゆる月ロケット打ち上げプロジェクト(「Moon Shot」Project)を発表します。果たして、米国は1969年人類史上初の月面月着陸に成功して人類を月に立たせます。その後、確かにニクソン政権だったでしょうか、この月ロケット打ち上げに相当するプロジェクトとして「がん戦争」プロジェクト(「A War against Cancer」Project)をNIHを中心に開始します。おそらく、月と同じように、10年もやれば目的は完遂するとの見通しだったのでしょう。しかし、現実はご存知のように人々は癌でいまだ苦しんでいます。
今回の米国政府の「National Cancet Moon Shot」プロジェクトは、いわば過去のリベンジを仕掛けたものと考えられます。
来年2017年で終わるオバマ政権ではありますが、十分に注目していきましょう。

1) 米国NIH 発表
https://www.nih.gov/about-nih/who-we-are/nih-director/statements/national-cancer-moonshot-begins-take-shape

2) 米国ホワイトハウス -プレス発表-メモランダム
https://www.whitehouse.gov/the-press-office/2016/01/28/memorandum-white-house-cancer-moonshot-task-force