啐啄同時

若手研究者を応援するオヤジ研究者の独白的な日記です。

「京」の次

 早くも、理研富士通が開発したスーパーコンピュータ「京」の次の開発プランが議論されています。
 そのこと自身は、すでに新聞報道などでご存じのことと思います。いわば、「京」がペタフロップス級の処理速度を果たす「ペタコン」ならば、その1000倍のエクサフロップス級の処理速度に挑戦する「エクサコン」の開発競争に入るということでしょう。 
 特に、「(オンリ-ワンも含めて)世界一を目指す」というのは、科学技術研究の自明な前提でありますので、計算処理速度の世界一を目指す「エクサコン」を開発することは、いいことだと思っています。
 スーパーコンピュータというのは、狭義に解釈すると、コンピュータ・シミュレーションや数値計算を得意とするベクトル系のスパコンを意味します。ある意味、故ジム・グレイ博士のいう「第3のパラダイム」に相当します。
 しかし一方、この世の中は、同じ故ジム・グレイ博士の「第4のパラダイム」、つまりいわゆる「ビッグデータ」の時代なのです。ビッグデータの解析には、むしろスカラーマシンといわれるコンピュータが適合しており、計算処理速度よりも、メモリを超巨大にすることやディスクと演算装置間のデータ転送を超高速化することなどが必要となっています。
 つまり、ベクトル系スパコンとスカラ系スパコンという全く本質的に異なる特徴をもつコンピュータを、どう開発するかという本質的な課題が存在するのです。
 「計算速度世界一」だけを目指して、旧パラダイム(第3のパラダイム)のスパコンを約1000億円以上を投入して開発し、時代が要求する新パラダイム(第4のパラダイム)のビッグデータ対応をしないのか、あるいは「計算速度世界一」は諦めて(もう「京」で一度は達成したから)ビッグデータ対応のスパコンを開発するのか、非常に難しい選択だったのでしょう。
 というのも、実は「サイは既に投げられて」おり、前者で行くようです。つまり、「計算速度世界一」を目指すスパコン開発を行うようです。
 そうすると、米国のNIHでは本年2013年の9月からの予算リクエストで全米に6つのビッグデータセンターを建設することを明らかにしているように、我が国でもビッグデータ対応をハード的にどうするかも含めて早急な手当てが必要と思われます。