啐啄同時

若手研究者を応援するオヤジ研究者の独白的な日記です。

「君はプランクトンを見たか?」

 慶應義塾大学日吉キャンパスサイエンスカフェで、講演をさせていただきました。
 現在、JSTのCRESTや水産庁のプロジェクトでおこなっている海洋微生物多様性メタゲノム解析に至る研究の経緯を、進化学の背景と歴史から始めて最新の技術革新まで紹介しながら、お話ししました。
 自律的には動かず基本的に浮遊して生活する生物を、「プランクトン」といいます。つまり、生物体の大小にかかわらずに、プランクトンといいますので、巨大なクラゲもプランクトンです。
 したがって、顕微鏡下でないとみえないようないわゆるプランクトンは、「微小プランクトン」と言います。特に、海に生息する微小プランクトンを、「海洋性微小プランクトン」というのです。
 最近のゲノム科学は、海水から、微小プランクトンなどを顕微鏡などで見て確認することもなく、直接にDNAを抽出し塩基配列を決定して、データベースから種などの分類単位や遺伝子の種類などを一挙に解析手法を編み出しました。これが「メタゲノム解析」なのです。
 したがって、メタゲノム解析を用いれば、「君はプランクトンを見なくてもいいのです。」
 この海洋微生物多様性メタゲノム解析プロジェクトは、海の微生物の多様性から生態学的な動的な機構の解明や赤潮の予防対策に活用することを目的としています。
 また、進化的には、眼の起源の鍵を握る遺伝子を海洋微生物のプランクトンのゲノムから見つけだしたいという野心も含まれています。
 一見関係のない「眼の起源」と「海洋性微小プランクトン」との必然的なつながりを、教授の研究上の「身の上」話として、解説させていただきました。
 講演終了後、たくさんのご質問を活発にいただき、大変実り大きな講演会にならました。
 関係者の皆様に深く感謝致します。