啐啄同時

若手研究者を応援するオヤジ研究者の独白的な日記です。

名前にだまされるな!

 最近、助教には3年や5年の任期が付くことが非常に多くなりました。パーマネントポジションとしての助教や、任期後に審査をしてパーマネントポジションに上げるテニュアトラックの助教は極端に少なくなりました。
 後者との区別を明確にするため、前者のような雇用年限の明確な助教(一度の再任を認めて計10年ほど居れる助教は除く(*))を「特任助教」と呼ぶことがあります。
 この特任助教は、その言葉の響きから、ポストドク研究員より上職のようなイメージを持つ若い人達が多いようです。
 しかし、よく考えてみましょう。実質的には、基本的にポストドク研究員とほとんど変わりません。いや、むしろ特任助教という名前がつく分、かなりヘビーな演習や実習を責任者としてやらされて、研究どころでない教育だけで任期が終わってしまう可能性さえあります。
 無論、演習や実習などの教育指導経験を積むことも重要です。しかし、教育指導のため、その大切な時期に論文などが全く出ないとなると、その先にアカデミックな経歴を積んでいくことすら、危なくなります。なぜなら、任期切れのとき次のポジション取りの競争に、論文を持っている相手に負けてしまうからです。
 その意味では、JSPSポストドク研究員などは、研究に専念できるだけなく、海外留学経験なども半分以下の期間なら可能です。
 特任「助教」の語感に惑わされて、ゆめゆめせっかく手に入れたJSPSポストドク研究員のポストを辞退したりして捨てることのないように気をつけましょう。絶好の研究機会を大切にすべきです。大袈裟にいえば、この先、助教・准教授・教授とアカデミックポジションに順調につけたとしても、研究者人生のなかで「研究三昧」を唯一楽しめるのは、「ポストドク研究員」のときだけかもしれません。 そして、このポストドク研究員のときが研究者の一生の質を決めてしまう時期でもある可能性が高いことにも、留意しましょう。