啐啄同時

若手研究者を応援するオヤジ研究者の独白的な日記です。

「砂の器」

 そういえば、若い女性が列車の窓から手を出して紙吹雪のように、列車の進行中に紙状のものを撒き散らし、それをたまたま目撃した新聞記者が風情ある風景としてしたためたコラム記事を刑事が読んだことから、物語が展開していく映画の1シーンを思い出したのです。
 そうです。松本清張原作の名作「砂の器」で、事件の犯人に結びつく導線の最初の部分です。原作の小説は、名作ながら推理小説の論理性が強い感があるのに対し、映画も名作でむしろ叙情的な感じが強くします。
 父と子の永遠の愛を、二人の放浪の旅が美しい日本の四季の移り変わりを追いかけながら、最終章のどんでん返しまで貫き通される大作でした。
 教授は、原作も読みましたが、映画は4〜5回は見ていると思います。
 病で物乞いをしながら放浪する父親と幼い男の子。海岸で疲れ切って行く当てもなく、希望を失って呆然と海を見ながらたたずむだけの父親。そのそばで、無邪気に砂で遊ぶ男の子。  「器」を手で上手に作って砂浜に並べては、無情にもそれをすぐに壊す波。それでも、何度も「砂の器」を作り続ける男の子。
 このシーンが、松本清張が一番言いたかったところでしょう。