啐啄同時

若手研究者を応援するオヤジ研究者の独白的な日記です。

「卓越大学院」と「卓越研究者」の考え方

「8.卓越大学院
○グローバル競争に勝ち抜くため、世界水準の大学院学位プログラムと教育 研究環境を整備することを目的として、卓越大学院の形成を促進する。卓越 大学院は、複数の大学の連携、研究開発機関や企業等との連携・協力を促進 することも視野に入れ、他大学、大学共同利用機関、研究開発法人、企業等 の優れた研究者や学生が交流・結集する「人材交流・共同研究のハブ」の形 成 を目指す。
○卓越大学院の形成は国立大学法人に限定しない。特出した分野を有する大 学であれば国立、公立、私立を問わず申請が可能とする。また、各大学が強 みを有する分野において形成するほか、ICTベースの文理融合分野等の これまでの日本に存在しない分野においても形成する。分野の選定に当た っては、日本が世界で勝たなければならない分野での形成を積極的に進め る観点をも踏まえ、産業界の意見も聴く仕組みとすることを検討する。
○申請の要件としては、研究分野で一定の水準を満たしているほか(例えば、 論文被引用数、外部資金獲得率等)、国内外に開かれた魅力ある教職員体制 となっていること(例えばw;、教員の国際公募・年俸制への取組、企業や研究 機関等とのクロスアポイントメントの取組、テニュアポストに占める若手 教員率、URAの配置状況等)などを課すことを検討する。採択された大学院に対しては、世界水準の教職員の配置、国内外の優秀な学生の受入れ環境 (給付型支援等)など、魅力的な教育研究環境の整備が進むよう、所要の支 援や評価の在り方についても検討する。
○他大学、大学共同利用機関、研究開発法人、企業等の研究者や学生が交流・ 結集して行う共同研究を円滑に推進する観点から、知財の取扱いに関する ルールの整備についても検討を行う。」

「9.卓越研究員
○任期なしのテニュアポストの在籍者の年齢が高まる一方で、若手研究者が 40 歳代半ばまで、短期の任期付ポストに滞留しがちであることから、優秀 な学生が不安定な研究職を目指さなくなっていることは、将来の日本の知・ イノベーション創出力を考える上で大きな問題である。このような状況を 改善し、研究職を若手にとって魅力あるキャリアパスにするため、卓越研究 員制度を新たに創設する。

○ 卓越研究員制度は、各研究機関に対して年俸制パーマネント職の導入を促 すとともに、国全体での研究員の選定も視野に、長期雇用を保証する研究 員を一定規模で確保するものである。例えば、通算 10 年など比較的長期間 の任期付きの身分とし、大学や研究機関の人事制度改革と連動させ、無期 雇用化をはかる。既存の人件費財源を最大限活用する(例えば、国立大学 法人で定年退職する大学教授が運営してきた研究室の助教ポスト等を活用 するとともに、競争的資金等の改革による直接経費等の使途の柔軟化や間 接経費等の活用により、自立して研究室を主宰できるポジションにふさわ しい給与を支給する魅力的なポストとする。研究機関や企業等とのクロス アポイントメントや混合給与も積極的に活用する。)。また、国による研 究費等の支援も検討する。

○ その際、大学改革プランの中で、各大学は、卓越研究員の 任期終了後のテ ニュア化、上乗せ給与、研究資源配分の優遇などの条件を提示し、各大学 が卓越研究員を競争して引き合うような制度とする。卓越大学院、特定研 究大学をはじめ 地域活性化の支援拠点等を目指す 大学等の准教授ポスト、 教授ポストに自らの意思で応募して就けることができるようにする 。なお、 卓越研究員が研究機関や企業等の職に就く事も可能とする。

○卓越研究員の雇用が特定の大学に偏ることのないように制度設計上の工夫 を図る。」

運営交付金の在り方の検討会の中間まとめ

「第3期中期目標期間における 国立大学法人運営費交付金の在り方について (中間まとめ)」が、2015年(平成27年)4月8日 に、「第3期中期目標期間における 国立大学法人運営費交付金の在り方に関する検討会」がまとめたものとして、全容が公開されました。
国立大学と共同利用機関のそれぞれについて、運営交付金などのあり方について、3つの重点項目をあげています。産業競争力会議が提唱している「特定研究大学(仮称)」については、意見が定まっていないせいか、これから議論すると書いてあります。

まずは、目次にて、概要を把握することができます。
「1.国立大学法人の現状と課題 ......................................1
2.これまでの運営費交付金に係る改善点とその課題 ........................2
3.第3期中期目標期間における国立大学法人の在り方 ......................3 4.第3期中期目標期間における大学共同利用機関法人の在り方 ..............6
5.第3期中期目標期間における運営費交付金の配分方法等 ..................8
6.競争的研究費との一体改革 ..............................16
7.財源の多元化や自律的な運営を図るための今後の検討課題 ............16
8.おわりに ......................................17」

重点支援

国立大学法人の場合の重点支援は、以下の3項目と記載されています。

「<重点支援1>
主として、人材育成や地域課題を解決する取組などを通じて地域に貢献する取組 とともに、専門分野の特性に配慮しつつ、強み・特色のある分野で世界ないし全国 的な教育研究を推進する取組等を第3期の機能強化の中核とする国立大学を重点的 に支援する。ここでいう「地域」の捉え方は、各国立大学の事情に応じて柔軟に設 定することができるものとする。この枠組みについては、運営費交付金の重点支援 の仕組みを通じて、人材育成や研究力の強化の取組を推進できるような支援を行う。」

「<重点支援2>
主として、専門分野の特性に配慮しつつ、強み・特色のある分野で地域というよ り世界ないし全国的な教育研究を推進する取組等を第3期の機能強化の中核とする 国立大学を重点的に支援する。この枠組みについては、当該分野に重点を置いた人 材育成や研究力の強化の取組を推進できるような支援を行う。」

「<重点支援3>
主として、卓越した成果を創出している海外大学と伍して、全学的に世界で卓越
した教育研究、社会実装を推進する取組を第3期の機能強化の中核とする国立大学 を重点的に支援する。この支援の枠組みについては、国際レベルの競争的な環境下 で、人材育成や研究力の強化の取組を推進できるような支援を行う。」


一方、共同研究機関法人の場合の重点支援は、以下の3項目です。

「<重点支援1>
主として、大型装置等を用いて世界の学術研究の中核として国際協力・国際共同 研究などにより先導的なモデルとなる研究システムの創出につながる研究力強化の 取組を支援する。」

「<重点支援2
主として、特定分野における大学共同利用機関を中核とする大学間連携やネット ワーク形成による新たな学問分野の創生に資する取組など、大学の枠を越えた研究 拠点を形成・強化する取組を支援する。」

「<重点支援3>
主として、大学全体の学術研究の基盤構築や運営等を効果的・効率的に推進する 取組など、強み・特色ある分野の教育研究を基礎として大学全体を支える研究環境 基盤を構築・強化する取組を支援する。」

「特定研究大学(仮称)」構想に要注意!

産業競争力会議が提唱している大学構想です。
「イノベーションの観点からの大学改革の基本的な考え方」(案)が、平成26年12月17日に「産業競争力会議 新陳代謝・イノベーションWG」から公表されました。
これによりますと、「特定研究大学(仮称)」制度が提唱されています。これは、既存の大学を類型化する中で、ある基準を満たした大学(国立大学だけでなく私立大学も)を「特定研究大学(仮称)」に指定して重点的な支援を行うものです。
この「特定研究大学(仮称構想)」制度には、「卓越大学院」と「卓越研究者」の設置・採用が付いてくることになります。

「3.特定研究大学(仮称)
○世界水準の教育研究機能を有する国立大学などで一定の条件を満たしてい るものを特定研究大学(仮称)とし、特例措置を講じて支援する制度を創設 する 。特定研究大学制度を「今後 10 年間でグローバルランキングトップ 100 に 10 校以上入る」とのKPIを達成する上での1つのツールとし、世 界の研究大学を意識した経営等を行う ことを促進する。

○特定研究大学になることは中期目標期間の期中でも可能とする。

○特定研究大学の条件 として、学内ガバナンス、教育研究、学内評価のグロ ーバル度等を勘案する (※)。例えば;、

  • 学内カに関して、学長選考会議や経営協議会等への海外トップ研 究大学経営陣(経験者を含む)等の参画の有無など。
  • 教育研究に関して、外国人教員や外国人留学生が一定割合(数)以上、英 語による学位コースの割合など。
  • 学内評価に関して、グローバル評価(海外の研究大学等の関係者の参画に よる厳格な評価)の実施など。

(※)なお、上記の事項は、必要に応じて、特定研究大学以外の世界最高水準の教育研究 を目指す大学についても、積極的な対応が求められるものである。

○厳しい条件とする一方で;、教育研究の自由度の拡大(大学院と学部の定員見 直しなど、組織編成の設置手続きの弾力化、授業料設定の自由度の拡大(授 業料減免を含む)等)、財務基盤の強化(余裕金運用対象範囲拡大、優秀な内 外の学生確保のための支援(奨学金、RA経費等)等)などについて、競争的 資金改革の動向をも踏まえて、インセンティブを付与し、大学自らが競争 力強化の取組を行うことを支援する。


○加えて、グローバルに競争する世界水準の研究大学として格段の競争的環 境が求められることから、競争的資金や寄付金を含め財源の多元化を図り 運営費交付金への依存度を下けるなど財政構造の変革を図る。


○また、特定研究大学は、卓越大学院を有し、卓越研究員 (いずれも後述) の制度を積極的に活用することから想定される。」