啐啄同時

若手研究者を応援するオヤジ研究者の独白的な日記です。

画材にプラチナと金 

 木村画伯の、伝統的な「日本画」でもなければ、もちろん「油絵」ない、まさに独創的な作品は、教授の薄っぺらな美術の知識ではとても表現できない範疇のものなのです。
 この木村画伯の独創性はどこからくるのか? その答えは無論単純には見いだせるものではありませんが、その一部のヒントは木村画伯ご自身の説明の中にありました。そりは、画材です。
 木村画伯の作品には、プラチナや金がふんだんに使われています。また、ほとんどの色が、さまざまな「岩」を粉にして独特の色合いを出させ、それを調合して作られているのです。そのようにして作出された目的の色の岩粉を絵の具のようにして「にかわ」で貼りつけて描いていくのです。このような独自の画材と描き方にこそ、独創性の発露の一端があると確信しました。
 実際、様々な色の岩粉の入った拳ほどの薬瓶が、所狭しと壁一面の棚に置いてありました。さりげなく、最も近くにあったコバルト色の岩粉が入った薬瓶をふっと手に取って、縦にゆすりながら、「これで、60万円もするんですよ!」 と微笑んだ木村画伯に、「それじゃあ、この棚いっぱいの岩粉の薬瓶は全部で、何億円でね!」と教授が畳みかけるように応じると、木村画伯はさらに目を細めて笑いました。
 「独創性」には、お金がかかるのかもしれません。