啐啄同時

若手研究者を応援するオヤジ研究者の独白的な日記です。

世代間正義

 サルストン博士の講演は、地球を救うために、私たちの消費行動や社会行動を変えていこうというものでした。GDPという消費の指標に踊らされた経済成長を目指すのではなく、過消費や過度のエネルギー消費をできるだけ抑えて、地球全体が来るべき2100年に100億人の人口になっても、全員が飢餓に苦しむことなく楽しく生きていけるようにしようという呼びかけでした。
 お世辞もあるのでしょうが、「今の日本のどこが悪いのか、低い経済成長率でも立派に高度な社会生活がおくれているではないか!」と、現状追随を賞賛するような言及もありました。
 教授は、サルストン博士の講演で、2つの点が非常に興味深いと思いました。ひとつは、「Inter-generation justice」と英語で言っていましたが、和訳すれば「世代間正義」とかと言うことでしょう。
 それぞれの世代が次の世代に、「世代間」としてまっとうな責任が負えるような規範を遵守するべきだという意味での「正義」のことを、「世代間正義」と言っているように理解しました。教授がよくいう「世代責任」という概念に似ています。
 そこで、世代間責任という立場から、現在日本で論争中の原発をどう思うかと質問をしましたら、「しっかりと推進すべきだ」と明言していました。このはっきりとしたものの言い方は、ノーベル賞受賞者に非常に共通した特徴だと良く感じますが、そこまで言い切っていました。どうも、昨年の原発事故を教訓とする一般の日本人の感覚からすると、驚くほどの明確さでありました。
 もう一つは、この消費型社会のあり方への批判は、総じて米国社会に向けられた強烈なメッセージのように受け取りました。これは飽くまでの推測ですが、米国社会にその消費行動や社会行動に修正を迫る意味合いが強いと感じました。今後、サルストン博士がどういう方向にこの運動を展開していくのか、よく注視していきたいと思います。