啐啄同時

若手研究者を応援するオヤジ研究者の独白的な日記です。

「100分de名著」


NHKテキスト「100分de名著」12月号(2011年)「銀河鉄道の夜」は、非常に秀逸な評論です。テキストという範疇を超えて、非常に読み応えのある立派な評論です。
 驚くべきことに、この著者は日本人ではありません。ロジャー・パルバース氏(Roger Pulvers)という人です。現在、東京工業大学世界文明センター長で、作家でもあります。1944年ニューヨーク生まれのオーストラリア人で、映画「戦場のメリークリスマス」の助監督でも知られている人物とのことです。
 先に述べた「銀河鉄道の夜」の「死の鉄道で知る乗り越えるべき生」。日蓮宗への思いが強すぎて、その伝道師的メッセージ性のために、遠ざけられた宮沢賢治の詩著作。一方、自然と自分を同化せざるえない自然科学者からみた世界。「わたしがあなたで、あなたがわたしである」という「痛み」と「救済」のまんだら的つながり(インドラの網)。
 そこには、農民労働運動や日蓮宗の立場ばかりから議論尽くされた「宮沢賢治」論とは、ひと味もふた味も異なる新鮮で未来志向の贖罪の遂行者としての「賢治」が提示されています。
 なるほど、売れるはずです、このテキストブックは。


 テキストの2ページ目に見開きで掲載されている宮沢賢治銀河鉄道の夜」の草稿第一葉(宮沢賢治記念館蔵)。(僭越ながら教授の直筆に似た書き散らし文字です。)主人公ジョバンニの死んでしまう親友カムパネルラが、妹トシ(詩では「トシ子」と狂表現)のメタファーと言われています。
 そして、「永訣の朝」・「松の針」・「無声慟哭」が、トシ臨終の日の3編詩と言われています。