啐啄同時

若手研究者を応援するオヤジ研究者の独白的な日記です。

HLAの不思議


 まもなく、「第20回組織適合性学会大会」が、静岡市で開催されます。
その大会において、第20回記念イベントとして、「佐治博夫と語ろう〜HLAの不思議〜」という語らいの場を設けました。パネルディスカッションという名目にしていますが、実際はインタビュー形式のやわらいトークショウのようになればいいなと思っています。司会には、ボイスキュー「サイエンスカクテル」などの遺伝研番組でおなじみだった、花村湖子さんが予定されています。花村さんにとって、日本最後のお仕事になるものと想われます。
 数年前に、佐治博夫・弓子ご夫妻が書かれたエッセイ集「HLAの不思議」という本は、示唆に富んだいい本です。できれば後ろのほうから読むと、この分野に初心の方でもすんなり入りやすいかもしれません。
 HLA(Human Leukocyte Antigen)は、当初白血球にも血液型が存在するといった形で発見され、その後ただちに白血球だけでなくほとんどの組織で、それらのタンパク質が発現していることが分かってきます。いわゆる主要組織適合性抗原の発見です。この主要組織適合性の遺伝子群が、主要組織適合性複合体(MHC: Major Histocompatibility Complex)遺伝子で、MHCクラスIとクラスIIが知られています。
 また、主要(Major)だけでなく、minorも見つかってきましたので、現在では単に「組織適合性」と呼ばれているのです。
 この分野は、臓器移植などの臨床研究から人類集団の進化や免疫系の起原に至るまで、重要で面白い問題をたくさん対象としています。
 また、MHCが個人個人で異なることから、「個性の遺伝学」とも言われています。これから、どう発展するのか興味深い研究分野です。特に、ゲノム情報が何万人の規模で分かるようになっていく近い将来を考えると、まさに個性の遺伝学研究は中心的な課題になることは疑いないでしょう。