啐啄同時

若手研究者を応援するオヤジ研究者の独白的な日記です。

 Eigen先生のノーベル賞メダル

Eigen先生に、実はもう一つ失礼な質問を、ほろ酔い気分の流れでしてしまいました。「ノーベル・メダルを見せてください!」と。これは、今思うと、本当に教授の「若気の至り」の質問でしたね、すみません。

しかし、この質問に対するEigen先生の答えが、驚くべきものでした。

ノーベル賞のメダルは、持っていません。」
「そうですか。それでは、博物館にでも置いてあるんですか?」
「いいえ、盗まれたんです。」

「えっ!ノーベル賞メダルを盗まれたんですか?」
「そうなんですか?それは、大騒ぎになったんじゃないですか?」
「そうなんです。ドイツの新聞の一面には載るは、テレビやラジオでも取り上げられて、実はドイツ国中の大騒ぎになりました。そして、国中をあげて探してくれたのですが、結局見つかりませんでした。」

ノーベル賞委員会は、メダルを再発行してくれないんですか?」
「してくれないということでした。いや、ノーベル賞メダルは問題じゃあないんです。その賞をとったような仕事ができたことが大切なんです。」

といったような会話をしたことを、今も鮮明に覚えています。

夕方になって、Eigen先生がニューヨーク・フィルハーモニーと共演して自身のピアノ演奏をLP盤(昔のLong Play用のレコード盤)にしたものに、ご自身のサインまでしてくれて、それをお土産としていただき、ご自宅を離れました。そして、夕暮れのGottingenの素敵なレストランでディナーをEigen先生に御馳走になった次第でした。

「問題」の選び方の重要さを教えてくれたEigen先生でした。