啐啄同時

若手研究者を応援するオヤジ研究者の独白的な日記です。

まぼろしのアップグレード

飛行機によく乗りますと、航空会社によってマイレージ・サービスがあって、その搭乗した飛行距離に応じてポイントがつき、そのポイントがある程度溜まると、そのポイントを使って、ある都市までの航空券がもらえたり、「アップグレード(Upgrade)」と言ってエコノミークラスからビジネスクラスに転向できたりします。

時として、このマイレージというポイントに関係無く、単なるサービスとして、搭乗間際にゲートでアップグレードをしてくれることがたまにあります。

今回、急用が出来て出張を前倒して来日した後、いよいよ成田空港からドバイ経由でサウジアラビアエミレーツ航空で戻るときでありました。たまたま、ビジネスクラスの航空券を持っていたのですが、ゲートから搭乗するときに、搭乗券(ボーディンパス)を地上係員の女性の方がバーコード読み取り装置にかざしたとたん、ピンポーンという音とともに赤ランプが点灯し、明らかにストップがかかってしまいました。

すると、すかさず、その女性の地上係員の方がちょこちょことパソコンのキーボードを叩いたところ、出たきたのはファーストクラスの新しい搭乗券。「今回は、ファーストクラスを用意させていただきました!」と、もう天の声と間違えてしまうくらいに聞こえてしまう地上係員の女性の声。そりゃあ、天下のエミレーツ航空のファーストクラスをサービスでゲットできた訳ですから、疲れに疲れ切った身体にも元気が一瞬にして蘇ってきました。宝くじで言えば、100万円が突然当たったようなものです。

そのときです。不要となった教授のビジネスクラスの搭乗券を破ろうとしているその天の声の地上係員の女性に、教授が「ありがとう!」と言いながら飛行機に向かって一歩踏み出したところに、「待った!」という男性職員の大きな声が教授の後ろで響きました。直感的に何かいい事態ではないと思いつつ、「ここは飛行機に駆け込んだほうが・・」と内心思ったものの、もうその時には男性職員が教授の背の真後ろにまで到達していました。

「すみません。ファーストクラスの座席の調整ができず、申し訳ありませんが、元の座席で搭乗願います!」と、男性職員。「そんなこと言われたって、わたしゃ、ファーストクラスの搭乗券はもう手にしちゃてるもんね!」と言いたい気持ちをじっと耐える教授。そういう間もなく、私の手からファーストクラスを搭乗券をサッと抜き取る男性職員。「おいおい、それは〜。」とも言えない教授。また、悪いことに、あの天の声の地上係員の女性が、まだ元の搭乗券を破っていなかったのでした。

疲れ切った身体にさらに鞭で打たれたように、元の搭乗券を持たされて、「行ってらっしゃいませ!」の声も虚しく、うなだれて飛行機へ。「「行ってらっしゃいませ」じゃあ、ないだろう!」と怒る言葉を吐く気力も無くなってしまってました。このまぼろしのファーストクラスのアップグレードによるトラウマは、教授の中でしばらく続くものと思われます。