サイエンスでは、「問題設定」というワナをしかけるのです。「問題設定」を「作業仮説の設定」と言っても構いません。
院生によっては、「問題設定ができました!」と、入学してわずか数日で言い放す強者もいます。
あまりの早さにびっくりして、「それはどんな問題設定?」と聴くと、「僕は、脳の進化をやります!」と言う。
でも、「脳の進化」と言うのは、「課題や分野の設定」であって、ワナとしての「問題設定」ではありません。
たとえば、「男と女の脳は発生の初期の段階から異なるか」という問題を設定したとしましょう。そうすると、例えば「マウスの雄と雌の脳の遺伝子発現パターンは、E10.5以前で既に異なる」という作業仮説を設定して、その検証に向かうのです。
これは、「Yes or No」が一般には言える立派なワナになります。
このようなワナを徹底的に探したり考えたりするのです。このワナが大きな未解決の問題に向かえれば向かうほど、大発見につながるはずです。