公益法人 中東調査会の「中東かわら版 No.19 」には、村上研究員が「サウジアラビア:2030年までの経済改革計画「ビジョン2030」を発表」と題して、非常に分かりやすい解説も載せています。
その記事の最初の方から引用しますと、次の通りです。
「2016年4月25日、サウジアラビア政府は、サルマーン国王主宰による閣議を開き、経済開発評議会(ムハンマド・サルマーン副皇太子が議長)が作成した2030年までの経済改革計画「ビジョン2030」を承認した。
同日、ムハンマド・サルマーン副皇太子が同計画について記者会見で発表した他、『Al-Arabiya』放送においてインタビューに答え、石油依存型経済から脱却し、投資収益に基づく国家を建設していくことを強調した。
発表された同計画における目標は以下の表のとおりである。また、これらの目標を達成するための手段として、
・国営石油会社サウジアラムコの5%未満の新規株式公開(IPO)、
・民営化による透明性の向上と汚職抑制、
・軍事産業の育成による国内調達の軍装備品支出の割合を50%まで拡大、
・外国人による長期的な労働・滞在を可能するグリーンカード制度の5年以内の導入
などがあわせて発表された。」
「ビジョン2030」による2030年までの目標
A) 活気ある社会
A1) 確立された価値
A1-1) ウムラ(小巡礼)の受入許容者数を年間800万人から3000万人に増やす
A1-2) UNESCOの世界遺産登録数を2倍以上にする ※2016年現在4件
A2) 生活の充足
A2-1) 国内における文化・娯楽活動への個人消費を2.9%から6%に上げる
A2-2) 少なくとも週に1回運動する人の割合を13%から40%に上げる
A2-3).3都市を世界の都市トップ100にランクインさせる
A3) 強固な基盤
A3-1)社会関係資本指数(SCI)で26位から10位になる
A3-2) 平均寿命を74歳から80歳にのばす
B) 盛況な経済
B1) 地理的位置の利用
B1-1) 物流効率指数(LPI)で49位から25位になる
B1-2)石油を除いたGDPにおける非石油製品の輸出の割合を16%から50%に上げる
B2) 効果的な投資
B2-1) 世界第19位から世界第15位の経済規模の国家になる
B2-2) 石油・ガス部門におけるサウジ人率を40%から75%に上げる
B2-3) 公的投資基金(PIF)の資産を6000億リヤールから7兆リヤール(約1.9兆ドル)に増やす
B3) オープンなビジネス
B3-1) 国際競争力指数(GCI)において25位から10位になる
B3-2) GDPに占める海外直接投資の割合を3.8%から5.7%に上げる
B3-3) GDPに占める民間部門の貢献の割合を40%から65%に上げる
B4) 豊富な機会
B4-1) 失業率を11.6%から7%に下げる
B4-2) GDPに占める中小企業の貢献の割合を20%から35%に上げる
B4-3) 労働力に占める女性の割合を22%から30%に上げる
C) 野心的な国家
C1) 効果的な統治
C1-1) 非石油政府収入を1630億リヤールから1兆リヤール(約2700億ドル)に増やす
C1-2) 世界ガバナンス指標(WGI)で80位から20位になる
C1-3) 電子政府開発指数(EGDI)でからトップ5に入る
C2) 責任ある国民
C2-1) 世帯収入に占める貯蓄率を6%から10%に上げる
C2-2) GDPに占める非営利部門の貢献の割合を1%未満から5%に上げる
C2-3) 年間100万人のボランティアが非営利部門で従事する(現状1.1万人)
[出所] 「ビジョン2030」公式ホームページ<http://vision2030.gov.sa/ar>より村上研究員が作成。
A, B, Cなどのカテゴリ-化は、教授が独自に付加したもの。