啐啄同時

若手研究者を応援するオヤジ研究者の独白的な日記です。

「nonsynonymous」の初出

 斎藤さんから、どうみても「nonsynonymous」という言葉を使った世界最初の論文は、教授が単名で出した1983年のGenetics誌の論文であると教えられて、いまさらながらにびっくりしました。
 昨日のスイスのバーゼルのECCB'12の会場での発表でも、「Nonsynonymous」という「非同義」置換の単語が頻繁に使われているのが、非常に印象的でした。、
 教授が、テキサス大学のNei教授のもとにいたとき、二人で考え出したのが「nonsynonymous」という言葉でした。当時、アミノ酸置換を起こす塩基置換を「replacement」とか「substitution」とかと言ったりして、真面目に「replacement substitution」とか「substitution substitution」といった訳の分からない言葉が頻繁に使われていました。よくて、「amino acid-alteling substitution」という長い専門語でした。そこで、「synonymous」の反対語に相当するような適切な単語を捜したのですが見つからず、しかたなく「nonsynonymous」で行こうと決めた次第でした。
  引用回数がずば抜けて高い1986年にMBE(Molecular Biology and Evolution)誌に「Nei-Gojobori Method」を発表した論文が「nonsynonymous」の初出とばかり思っていました。しかし、1983年に、61X61のcodon substitution matrixを初めて用いて、synonymous substitutions と「nonsynonymous」substitutionsの挙動をしらべ、synonymous substitutionsの飽和は推定不足のみかけだけのものとの指摘したのが、教授単名で発表したGenetics誌の論文でした。これが「nonsynonymous」という単語がきちんと何度も用いられた初出だとは、自分ながらもびっくりした次第でした。
 それでも、1986年から1983年の初出が3年も早まった訳で、斎藤さんに感謝です。