啐啄同時

若手研究者を応援するオヤジ研究者の独白的な日記です。

(金) 新型コロナのPCR検査のCT値と「偽陽性」

 新型コロナのワクチン接種のスケジュールが、特に医療従事者と65歳以上の高齢者のスケジュールがだんだん明らかになってきている一方、いわゆる「第4波」の新規感染者数の増加がなかなか止まらなくなって来ているようです。

 昨年の今頃は日本ではPCR検査は極力行わないと言っていたのが嘘のように、現在はPCR検査の価格破壊とでも言っていいように、わずか数千円でドラッグストアでもできるようになってきました。

 そのとき、PCR検査と一口に言いますが、「その検査は同じように手法で同じような基準でやられているのだろうか?」と言う疑問を抱くのは、教授だけではないと思います。qRT-PCR検査と言う意味では確かに同じとは言えますが、どの会社のキットを使っているかで、プライマーと言われるウイルス遺伝子を増幅する場所もキットごとに異なり、特に陽性と陰性を判定する基準も異なります。

 特に、「CT値」と言われる何回増幅するかという基準が大きく異なるのが、大きな問題だと思います。特に、この増幅はポリメラーゼと言われる複製酵素(Polymerase)の連鎖反応(Chain Reaction)ですので、回数の異なり方が指数関数的に効いてきますので、「CT値」が異なると陽性の判定に大きな影響を与えることになります。

 CT値は、先述したように何回増幅するか(「Threshold Cycle」)という基準値ですが、日本では40回増幅とか、45回増幅というところもあるあるようです。増幅回数が多すぎると、何か無関係なDNAを引っ掛けて増幅してしまい、新型コロナウイルスとは関係のないものでも反応が出て、「陽性」として判定する可能性が高いのです。

 PCR専門家と話をしますと、新型コロナ禍をうまく抑え込んでいると言われる台湾では、CT値は35 (35回の増幅)であり、日本のPCR検査のCT値を40(40回増幅)で「陽性」と判定された人を仮に台湾で判定してもらうとしたら「陰性」判定される人多々いるように推測されると言っています。

 さらに、2021年4月2日tぴうわずか1ヶ月前に報告された国立感染症研究所の速報の報告書によりますと、CT値が30以上では感染リスクが少ないと言うことが明記されています。

つまり、日本のPCR検査では陰性の人でも「陽性」の判定と判定する「偽陽性」も多く含まれており、また感染リスクが極めて少なくなった人達も長い間病院に入院させているため、不必要に病床の逼迫を起こしている可能性があります。

 安全に安全を見込むと言う考え方は、重症化した患者や本当に必要な感染リスク高い人達のベットを奪っていることになるため、この「偽陽性」問題は非常に深刻で重要な問題だと言えます。

 早急に、PCR検査手法やCT値の判定基準の標準化や統一化を行うことは、緊急で重要な問題だと言えます。

 

国立感染症研究所の「新型コロナウイルスVOC-202012/01感染者の陰性確認完了までに要した日数とCt値の推移に関する考察 (速報掲載日 2021/4/2)」では、以下のように警鐘を鳴らしています。

Ct値の平均は35.0であり、発症日から10日未満の検体においても8割以上がCt>30を示していた。COVID-19のPCR検査におけるCt値と感染リスクの相関については複数の報告があり、Ct値が30を超える患者では感染リスクが低いとされている4)。陰性確認検査においては、Ct値が35付近になってからも複数回陽性となる感染者もおり、症状が改善し感染リスクも低いと考えられる患者が長期間病床を占有してしまうという大きな問題を抱えている。現在の国内におけるVOCの感染者数増加を受けて、退院基準の再検討が必要であると考えられる。

 

引用: 国立感染症研究所

新型コロナウイルスVOC-202012/01感染者の陰性確認完了までに要した日数とCt値の推移に関する考察