啐啄同時

若手研究者を応援するオヤジ研究者の独白的な日記です。

大学共同利用研究機関と総研大の行方

国立遺伝学研究所(遺伝研)は、情報・システム大学共同利用機構の1つの研究所となり、総研大では生命科学研究科の遺伝学専攻を担当していました。
学術で先進的な研究を行い日本をリードして国際的な先導性を確保することを目的としてきた遺伝研のような国立研究所は、旧文部省の研究機関課の管轄の下、比較的に恵まれた研究費や世界最先端の機器や施設の整備が行われました。しかし、近年では、大学共同利用機関は他の国立大学と同じように、毎年運営交付金の10%削減に晒されて、理研産総研が研究開発法人となって「研究」最優先の使命の担保が明確化される中、研究所としてのアイデンティティを維持できなくなってきている状況が出てきています。
このため、この大学共同利用機関の再編は時間の問題となっていました。そして、どうも総研大の下にこれらの大学共同利用機関を全て入れ込んでしまう案が急浮上し、その編成に向けて議論が急ピッチで進んでいると言われています。
そうしますと、大学共同利用機関総研大の過去の経緯は真逆な形となり、大学共同利用機関総研大の研究部分を担当することになり、本来の国立研究所が持っていた「研究」最優先のミッションがなくなって、大学と同じになってしまうことを意味します。
例えて言えば、「大学共同利用機関(旧国立研究所)よ、研究する機関でありたいの?それとも大学になりたいの?」という自問自答する時間もなく、「大学」となってなっていく議論が実質的に進められていっているのかも知れません。
「基礎研究なくしてイノベーションなし」という重要な格言とは裏腹に、旧国立研究所の大学化には国家的な危機が内在されていることにも留意が必要でしょう。また、大学共同利用機関を取り込んだ総研大が、堂々と「指定大学」として認可を勝ち取る実力はあるのかという問いに晒されてしまうという現実もあります。
総研大ブランドの大学ランキングや論文サイテーションなどが上昇しているという現在のいい状況もあることから、日本が不得意とする「国際化」を早急に達成できる様な「基礎研究」最優先の旧国立研究所はどうあるべきなのか、その将来像をしっかりと議論する必要があると思います。
サウジアラビアで現役を続ける国立遺伝学研究所総研大の名誉教授としては、大学共同利用機関総研大の行方に大いに注目したいと思っています。